ROOM 12 SATOSHI HIROSE
1963年東京生まれ。現在、ミラノと東京を拠点に活動。多摩美術大学卒業後にイタリア政府給費奨学生として渡伊。ポーラアート財団の研究奨学金を得てミラノ・ブレラ美術アカデミーを修了。2008年には、文化庁在外研修員としてニューヨークに滞在。水戸芸術館、広島市現代美術館、イタリアのペッチ現代美術館、ボローニャ近代美術館、オーストラリアのシドニー現代美術館など世界各地で展覧会多数参加。2020年にアーツ前橋で個展「廣瀬智央 地球はレモンのように青い」を開催した。
廣瀬は、豆やパスタをはじめ、身の回りの日常の素材を使い、豊かさと貧しさ、人工と自然、ミクロをマクロなど相反する要素を共存させる詩的な表現で知られる。また、嗅覚や味覚など、視覚以外の感覚に訴える作品や、異なる民族や文化間に潜む共通領域や差異、日常生活の小さな事象の豊かさに触れる作品を発表し続け、国内外で高い評価を受けている。廊下に設置された《前橋市》は、前橋市の現在の形に切り抜かれた鉄板が反転されて置かれている。裏返すという単純な行為だが、地球の裏側にいることを想起させ、前橋市が地球を支えるようなユニークな視点を生み出している。《ある夜の旅》は、廣瀬が15年ほどかけて集めた雑誌等の写真から、日の出や日没など、日の移り変わりのイメージを選び、その紙面をデジタルカメラにて再撮影する。撮影された画像は、正方形に切り取られ、日光写真のように青色のモノトーンに加工され、豊かな色調が再現されるピュアピグメントプリントでまるでビロードのような肌触りをもって印刷される。焦点のずれたあいまいなイメージは、昼と夜、現実とフィクションの境界を溶かし、いつか訪れた街や夢でみた風景を喚起させる。また、窓からはアーツ前橋の屋上看板を使った作品を見ることができる。ミラノ在住の廣瀬と前橋の母子生活支援施設の児童が、お互いの見ている空を撮影し、〈空の交換日記〉をすることで生まれた。現在も「のぞみの家」の母子たちと19年続くプロジェクトを継続している。